評価損(格落ち)について

評価損(格落ち)って何?

評価損(「格落ち」と呼ばれることもあります)とは、簡単にいえば、事故車両を修理しても回復できなかった損害をいいます。

具体的には、事故車両を修理しても回復できない欠陥が残ってしまった場合の損害(「技術上の評価損」といいます)と、車両に事故歴があることで車の価値が落ちてしまった場合の損害(「取引上の評価損」といいます)の2つを指します。

技術上の評価損については、欠陥の存在が明らかであれば、欠陥が残ってしまったことによる価値の下落分について賠償が認められることが通常であると思います。

しかし、示談交渉や裁判において多く賠償請求がなされるのは、取引上の評価損です。

そして、取引上の評価損については、賠償を認めるべきか争われることが多く、裁判所の判断でも賠償を認めたケースと認めなかったケースで分かれています。

そして、裁判でも判断が分かれているような状況ですので、示談交渉段階において取引上の評価損についてスムーズに賠償に応じてもらうことは難しく、加害者側保険会社は、取引上の評価損の賠償には応じようとしないことが通常です

取引上の評価損で賠償が認められるケースは?

どのような場合に取引上の評価損で賠償が認められるかについては、最終的にはケースバイケースとなりますが、まずは、車両の外観だけでなく骨格部分を損傷し、修理・交換したかどうか(「修復歴」があるかどうか)が重要になります。

骨格部分を修理・交換した事実のことを「修復歴」といいますが、「修復歴」があると中古車として販売される際に価格が安く設定されることが通常であるため、賠償を認めるべきではないかと考えられているのです。

ちなみに、車両の骨格部分とは、(1) フレーム (サイドメンバー)、(2) クロスメンバー、(3) インサイドパネル、(4) ピラー、(5) ダッシュパネル、(6) ルーフパネル、(7) フロア、(8) トランクフロア、(9) ラジエータコアサポートを指します。

また、車種や登録年数、走行距離なども重要となり、外国車や国産人気車種であれば、新車登録から5年以内(走行距離で6万キロ以内)、それ以外の国産車であれば、新車登録から3年以内(走行距離で4万キロ以内)であれば、取引上の評価損について賠償が認められる可能性が高くなります。

取引上の評価損を証明するためには?

取引上の評価損について賠償を受けるためには、言い値で金額を述べるだけではもちろん足りず、取引上の評価損が発生していることや具体的にいくらの損害が生じているかについて資料を用いて証明しなければなりません。

この証明の手段としてよく用いられているものとしては、財団法人日本自動車査定協会という機関で発行してもらえる事故減価額証明書という書面です。

上で紹介した「修復歴」がある場合でないと事故減価額証明書は発行してもらえませんが、「修復歴」があれば、査定料を支払い、事故前と現時点を比較してどれだけ車両の価値が下がっているか(事故減価額)を査定してもらい、その結果を事故減価額証明書という書面で交付してもらうことができます。

この書面によって取引上の評価損が発生していることやその損害額について証明をすることが可能です。

取引上の評価損の賠償額の相場は?

上でも紹介したように、取引上の評価損は、車種や登録年数、走行距離など様々な点から判断されますので、取引上の評価損について賠償が認められる場合であっても、認められる賠償額にはバラつきがあります。

そして、裁判所が取引上の評価損について賠償を認める場合、その多くが事故後に行った修理における修理費用の〇%という形で賠償額を算定しています。

そのため、上で紹介した事故減価額証明書を裁判で証拠として提出した場合であっても、そこに記載されている減価額の金額については、裁判所は参考程度に考えているということになります。

そして、裁判所が認める取引上の評価損の賠償額として修理費用の何%が相場かといえば、40%や50%の賠償を認めた例も存在はしますが、多くは0%~30%となっています。

評価損の問題は非常に難しい問題で、裁判所であっても見解が完全に一致しているとはいえない状況です。

そのため、評価損で悩まれている方は自分だけで悩むもうとせず、弁護士に相談されることをお勧めします。

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